ICIマンスリーレター(2026年9月)異常気象、大雨による災害のお見舞いを申し上げます。 オンライン研究所の輪郭が見えてきました!さて、研究所とは、どんな場所なのでしょう。 建物があって、研究室があり、書棚には本が並び、そこで誰かが研究している。そんな風景を思い浮かべるかもしれません。しかしICIには、そのような建物はありません。 以前から、ICIはオンライン上の研究所を実現できないか、と考えてきました。それは単に「研究所のホームページをつくる」ということではなく、人が集まり、問いを持ち寄り、資料を読み、対話し、考えたことを残す。そして、それを誰かが読み、そこからまた新しい問いが生まれる。そんな研究という営みそのものが、オンライン上で起きる場所です。 そこでまず構想できたのが、Interplace Communityでした。どちらかといえば構想の中にあった風景です。 2026年8月、これまで別々につくってきたものを並べて眺めてみると、少しだけ「研究所らしい輪郭」が見えてきました。 今月は、そんな一か月を振り返ってみます。 ホームページを「見る場所」から「探索する場所」へICIにはすでに、日々の研究や実践から生まれた考察を発信するInsights、その背景にある理論や概念を整理するConcept Atlasがあり、そのナレッジが蓄積されつつあります。ただ、どれほど多くの情報を掲載しても、それだけではホームページは基本的に「来て、見る」場所でしかありません。 そこからもう一歩、ホームページそのものを、生きたナレッジが存在する場所にできないだろうかと考えてみました。 何か知りたいことがあれば調べられる。一つのConceptから、その背景にある理論へ進める。一冊の本に出会えば、その本から別の研究へ向かう。Insightを読んで生まれた疑問から、別の勧化方(概念:Concept)へたどり着く。 決められた順番でコンテンツを読むのではなく、自分の問いを持って知識の中を回遊できる空間にしていきたいのです。 そのために8月下旬から本格的に建設を始めたのが、知識ライブラリー「ICI Alexandria」です。 オンラインに存在するソフィアの殿堂Alexandriaという名前は、古代のアレクサンドリア図書館から借りました。古代世界の膨大な知を集め、研究者たちが集い、叡知を交換した場所です。単なる書物の図書館というより、ソフィア(Sophia=智慧)の殿堂のように思えます。 ICIのAlexandriaも、書籍や論文のリストではなく書籍、論文、Web記事、報告書、映像などの資料を関連するConceptやInsightsと結びつけ、Alexandria ― Concept Atlas ― Insights の三つの間を行き来できるようにすることを目指しています。 一冊の本からConcept、ConceptからICIの考察、Insightから、その背景にある原典へ。知識を「置いておく」のではなく、ダイナミックに知識と知識の間を歩けるようにするという発想です。 これが育っていけば、ICIのホームページは「研究成果を掲載しているWebサイト」から、調べ、考え、知識同士の関係をたどることのできるバーチャルな研究所そのものへ変わっていくでしょう。 ミス・イーランドへの司書機能追加Alexandria構築と同時に、AIクラーク「ミス・イーランド」もアップデートしました。従来の質問に答えたり、文章を整理したり、対話しながら考えることを手伝ったりすることに加えて、8月にはAPI版がICIのWebサイト内でも利用できるようになっています。 このことはAlexandriaが稼働し始めると、大切な役割、司書を担えるようになるということです。 「このテーマについて調べたい」と尋ねれば、関連するConceptやInsights、Alexandriaの資料を探したり、一冊の本から、関連するConceptへ案内したり、対話している途中で、「この話に近い研究があります」と別の知識を差し出す、といったことをしてくれます。 つまり、ホームページを回遊しているときにはいつも、右下から、知識の中を一緒に歩いてくれる存在になってくれます。 成人発達理論の深堀りもちろん、研究所の仕組みをつくること自体が目的ではありません。そこで何を研究するのかが大切です。 ICIでは以前からインテグラル理論を重要な思想的背景の一つとしてきましたが、キャリア支援や対人支援の実践を考えていくと、次第に成人発達理論との接点が増えてきました。 8月から『心の複雑さに向き合うとは、どういうことか』の「深読み会」がスタートしています。キャリアコンサルティングだけでなく、カウンセリング、コーチング、組織開発などを含めた、これからの対人支援に新しい方向性を示すものになるのではないかと考えています。 8月には、ICIがなぜインテグラル理論を追いかけながら成人発達の実践へ近づいていったのか、その経緯も振り返りました。少し不思議な道のりですが、意外に自然な流れだったようにも思います。 「分かるために問う」なのか「気づきを持ち寄る」ための問いか8月、読書会での「問い」について考えていたとき、「分からないので教えてほしい」という問い方そのものについて話しました。もちろん、それも一つの学び方ですが、それだけでは「答えを持っている人」と「教えてもらう人」という関係です。 発想を変えると、 「分からないことを尋ねる前に、自分が何に気づいたのかを言葉にしてみる」ことを前に置いてみる。 「私はここをこう読みました」「こんな経験を思い出しました」「ここに少し違和感があります」… そうすると、誰かが別の気づきを置く。それを聞いて、また別の人の中に新しい問いが生まれる。 知識を受け取るだけではなく、それぞれの意味世界を持ち寄りながら学ぶというサイクルが回り始めます。 冒頭のInterplace Communityという「人が集まる場所」をつくろうとした心の動きも、そこにつながっているのかもしれません。 研究所は、建物ではなく「関係」で成り立つ人が集まり、問いや気づきを持ち寄るInterplace Communityがあり、そこで生まれる考察を発信するInsightsがあり、その概念を整理するConcept Atlasがあり、それ支える資料や原典を蓄えるAlexandriaがあり、その間で、人と知識をつなぐミス・イーランドがいる。これはもう立派なオンラインの研究所といえるでしょう。このホームページは、ただ「来て、見る」ものではなくなりつつあります。問いを持って訪れ、調べ、歩き回り、知識と出会い、ときには人やAIと対話し、来たときとは少し違う問いを持って帰る。そんな生きたナレッジのある場所にしていきたいと思っています。 人と問いと知識が出会い、その関係から新しい知が生まれ続ける場所。 2025年7月にMirAIプロジェクトを始めた頃には、まだ遠くに見えていた風景です。それから一年余り。ソフィアの殿堂をイメージして名づけたAlexandriaには、だまだ建設中ですが、少しずつ蔵書を入れていきます。 新しい問いが生まれれば、新しい知識が加わり、知識同士の関係も変わります。そして、そのたびに研究所も少しずつ姿を変えていきます。 2026年8月。 今月は、そんな一か月でした。 引き続き、ICIの活動を応援よろしくお願いいたします。 また次のマンスリーレターで、お会いしましょう。
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対人支援の現場と日々の実践の中から生まれる思考を、少しずつ言葉にして、活動の記録とともに、問いや気づきを共有していきます。
みなさん、暑中お見舞い申し上げます。 ICIマンスリーレター(2026年8月) 2026年7月の活動を振り返って 2026年7月のICIは、これまで積み重ねてきた実践や問いを、公開文書として落とし込んだほか、AI時代における対人支援と内省のあり方を、あらためて考えた一か月でした。 キャリアコンサルタントの質向上をめぐる論点整理、メタ・スーパーヴィジョン(MSV)の理論と方法の公開、面談支援関連手引きの更新、そして「書くこと」「振り返ること」「思考の余白」をめぐる発信… それぞれは異なる活動に見えますが、その根底には、実践を経験のまま終わらせず、立ち止まり、言葉にし、次の実践へとつなげていくという共通した姿勢で取り組みました。 1.ICI実践研究員の募集 7月初旬、これまで準備を進めてきた「ICI実践研究員」の募集要項を公開しました。 ICIが求めているのは、完成された理論を一方的に学ぶ人ではなく、自分自身の現場や問題意識を持ち寄り、問いを立て、対話し、試し、振り返りながら、実践知をともにつくっていく人です。...
ICIマンスリーレター(2026年7月) 2026年7月6日 みなさん、こんにちは 2026年6月の活動を振り返って 2026年6月のICIは、スーパーヴィジョン/メタ・スーパーヴィジョン、キャリア面談支援活動、ICIのメンバー補充のための実践研究員制度の設計、そして公開知としての発信基盤の整備が大きく進んだ一か月となっています。 これまで積み重ねてきた実践を、少しずつ「制度」「言葉」「場」「記録」として形にしていく月だったように思います。 1. MSV――技法指導を超えて、実践者の成長を支える場へ メタ・スーパーヴィジョン(MSV)の研修第3期が順調に進んでいます。 MSVでは、キャリアコンサルタントや対人支援者の学びを、単なる技法の修正や助言にとどめるのではなく、実践者自身がどのように相談者と出会い、どのように応答し、どのように自分のあり方を問い直していくのかという、より深い学びのプロセスとして捉えます。...
AI時代の「丁寧な接触」と、場を守るための境界線 みなさま、こんにちは。 今日は少しだけ、オンライン上でのコミュニケーションについて考えたことを共有したいと思います。 丁寧なメッセージが届く時代に 最近、SNSやビジネス系のプラットフォームを通じて、初対面の方からとても丁寧なメッセージをいただく機会があります。こちらの活動やプロフィールに触れ、「対話」「学び」「問いかけ」「AI」などの言葉に共感した、と書いてくださることもあります。 そのような言葉をいただくこと自体は、とてもありがたいことです。ICIは、対話や学びを大切にしている場ですので、関心を寄せてくださる方がいることは励みになります。 文章の丁寧さと、信頼できる関係は別のもの 一方で、AIや翻訳ツールが発達した今、私たちは「文章が丁寧であること」と「信頼できる関係であること」を、少し慎重に分けて考える必要があるとも感じています。...